エピソード3
“さくら”の手術
多因子性疾患について

そして・・・



「さくら」の手術

“さくら”が 2005年6月25日河川敷で遊んでいた時のことです。走りだしたと同時に急に右後ろ足がつけなくなり、膝を動かすと「コックン、コックン」と音が聞こえました。そのまま急いで病院に行くと、以前から極軽度なHD(股関節形成不全)だと診断されていた股関節が悪くなったのではなく、膝の靱帯に何らかの支障があるようでした。

 翌日再度レントゲン検査などを行ってみるとやはり、犬の足にとって大切な前十字靱帯の断裂と診断されました。「これは大変なことになった」という思いが家族を襲ってきました。“さくら”は生まれながらHDの血統であるため、心配はしてましたが「軽度」と診断されておりましたし、特にこれまで症状もなかったものですから、それなりに生活をしておりました。もちろんHDの診断をされた時から、デイスク競技や激しい運動はひかえ、体重も制限するなどして、“さくら”をこれまで以上に気づかってきました。原因は「もともと」HDを発症しているため、股関節や足腰などのバランスが良くなく、知らず知らずのうちに膝に負担がかかり、大切な靱帯が切れたことだったようです。

特に運動量の多い、動きの激しいボーダーコリーの場合は靱帯の補強や繋ぐ手術をしたぐらいでは、十分な運動は出来ないようで、また再発したりするようです。 そこで、日本でも動物整形外科の専門医の第一人者として知られる、大阪のファーブル動物病院の院長・山口先生を岡山のアマノ動物病院から紹介して頂きまして、大阪まで診断を受けに行きました。

 山口先生は股関節や膝を特殊な技法によって再生手術を日本で20例(2005年7月現在)ぐらいされています。その手術をうけると高い確率で、元通りの動きができるとお聞きして、そのことについて長時間にわたり説明をうけました。

 「なんとかして、“さくら”を助けてあげたい、そして、もとの身体にしてボーダーコリーらしく走らせてあげたい」という強い希望をもち、全て山口先生にお願いすることにしました。“さくら”の膝の関節部分は早く治療しないと半月板の損傷も酷くなるとのことで、7月12日に山口先生に岡山のアマノ動物病院まで来ていただき、天野先生と共同で手術をしていただくことになりました。

手術は無事に終了し、その夜、“さくら”に会いに病院に行きました。モニターを通して4本足で立っている“さくら”を見ますと、思わず涙がでてしまいました。ほんとによく頑張った“さくら”が手術した当日に、早くも痛めた足が地についているのにはびっくりしました。現代の動物医療が進んでいることには、ほんとうに驚きました。今も“さくら”の膝は、特殊な米国製のチタンプレートで固定されています。



先ほどもふれましたように、HDの ため足腰のバランスも良くなく、いつの間にか膝に負担がかかっていたようです。これまでも股関節の状態には気をつかっていたのですが、まさか膝の靱帯に支障があらわれるとは思ってもいませんでした。膝を支えるとっても大切な太い靱帯、前十字靱帯が切れたことによって完全に右後ろ足が地面につけなくなり、3本足状態になってしまったのです。4つ足の動物は、どこか1ヵ所でも支障があれば、何らかの兆候が出てくるようです。

 HDというのは、近年ボーダーコリーによく見られる遺伝性疾患です。私の知識では先天的な発症例は70〜80%、後天的な発症例は20〜30%のようです。遺伝的なことと生活環境や食に関することの両面で考えられます。

 
エピソードTでもお話したように多因子性疾患です。特定していくことは非常に難しいのですが、患犬の血統書をより多く調べていくことで、注意しなければならない血統が見えてきました。また、両親が完璧に良い股関節であっても、その祖母・父犬や親犬の兄姉犬にHDが数頭出ていることもあります。このような場合、親犬に問題がなくてもHDの子供が生まれてくる場合があります。このあたりが多因子性遺伝の難しいところです。
 
 股関節形成不全は「まだまだ」未知のことが多く、クリアな両親犬から発症する子犬が生まれた例はあります。そして、日々の生活する環境が整ってなく、飼い主さんが知らないうちに滑るフローリングや階段の上り下り、成長していない段階での激しいスポーツ競技などによって、壊された犬も少なくないのです。今後も引き続き私たちは勉強しなければなりません。


いつもはさくらと2階の寝室で寝ていましたが、さくらが2階へ上がるのが困難なため
1階のリビングに布団を敷いて毎晩寝ていました。

“さくら”は 手術を終了した時点で「ほぼ大丈夫だ」と言われまして、最初は「3週間安静に過ごして」、さらに「3週間無理な運動や動きのないように注意してください」 と言われました。最初のうちは時折足を庇っていましたが、徐々に動きもよくなり、手術後約2ヵ月ぐらい経つと、ほとんどもとどおりの“さくら”になりました。本当によかったです。

我が家にボーダーコリーの素晴らしいことを伝えてくれた“さくら”が良くなりましたので、ほんとうに嬉しかったです。このことで多くの友人や獣医師および動物看護士の方々にお世話になりました。みなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。ほんとうにありがとうございました。

そして、2005年7月12日“さくら”が手術をうけている途中、我が家では“アイル”の出産が始まったため、家族は別々に行動をしました。私は“さくら”に付き添って病院に残り、妻と娘、そして、マックスパパと友人は“アイル”の出産を見守ることになりました。

さくらの父より 2007年2月4日